E.G.コンバット(1)(2)

E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)

E.G.コンバット (電撃文庫 あ 8-1)

E.G.コンバット〈2nd〉 (電撃文庫)

E.G.コンバット〈2nd〉 (電撃文庫)

西暦2029年7月9日。光に近い速度の侵攻が始まった。24時間で全人口の4割が失われ、48時間で地上の全ての火が消えた。奴ら――呼称はプラネタリウム――の正体はなお不明。火星植民計画の足場だった月が反攻本拠となり、地球の残存兵力と合流し「救世軍」を自称。女性を狙う敵の性質から全女性人工月面移送計画――通称「ジュリエット計画」が実行され、月に女性、地球に男性、ほぼ完全な人口隔離が実現。西暦2067年現在。絶望的な戦いは、今も続いている。

ルノア・キササゲ。21歳。北米総司令部最年少大尉。生成晶撃破数歴代7位。月より舞い降りしワルキューレ。反応速度の女神。男性ファン多数。女性ファンも多数――。
若き"英雄"に嫉妬した先輩が裏で画策し、ルノアは地球の前線から引き離され、月に戻される事になった。与えられた任務は卒業した訓練校の教官! そして彼女を待っていたのは訓練校始まっての落ちこぼれと言われる個性溢れ過ぎな5人組だった……。


秋山瑞人ファン、通称"瑞っ子"がテンナインの確度で諦めつつも切望して止まない一冊があります。「EGFマダー?」の一言で表される、E.G.コンバットシリーズの最終巻。既刊は3冊までですが、最終といわれる4巻は待たれる事数年、未だ影も形も見えません。
原作者なのでイラストも☆よしみるさんなのはしょうがないんですが、そもそもこのイラストが間違いだったかも。や、イラスト自体はいいんです、可愛いし。表紙を何とかしてほしかった。これがまた☆が舞い飛びそうなキラキラ物だったので、それだけで敬遠する人が続出。かくいう私もその一人で、秋山センセの他作品を読んで慌てて探すも時遅し。とっても入手困難なシリーズとなってしまいました。今も探してますが3巻は見つからず。残念ながら2巻までしか読めてません。ウェブ上なら入手できるかもですが……。

いわゆる軍隊モノで、訓練校の汗みどろの訓練や厳しいテスト、海兵隊流の悪口雑言、訓練生同士の確執や「員数合わせ」など、お約束のオンパレード。男皆無、女性のみという特異な環境(だからといってお上品にはなりません)が一味違う現実感を演出。さらに秋山瑞人のテンポのよい語り口、電子機械知性の独特な描写がブレンドされて、読み応えはまさに絶妙爽快。E.G.シリーズを無類の逸品に仕上げています。要約すれば、友情・努力・勝利の方程式なのですが、舞台立てや演出を工夫すればここまで魅せる作品になるのか、と実感させられますよ。
2巻では、ルノア隊の面々がさらなる陰謀と窮地に陥りますが、ここで体を張るのが双脚砲台の流体脊髄素子GARP。「彼」の活躍と献身は、ラストシーンをいっそう切ないものに変えています。
名言も数多く、とうてい取り上げきれません。一部抜粋するなら、
「電線に、電気を通すと、そこには意識が生じるんです」
「ご武運を。あなた方の行く先に、いつも温かな空気(エア)がありますように」
「あいつの魂に軌道速度のあらんことを」
あたりでしょうかね。


このクオリティを持続しているなら、3巻も幻のEGFも是非にでも読みたいリストのほぼトップに来るんですが……あまりウェブでは芳しくない噂を聞きます。
それでも、待ちます。待っています。