念力密室!

念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

西澤保彦の超能力密室もの。そんなジャンルあり? と思ってしまうが、超能力自体を極めて限定された設定に控えることで、密室をハウダニットからホワイダニットに変えて新しい息吹をもたらしています。


売れない作家・保科匡緒(ほしな・まさお、32歳)がマンションの自室に帰ってみると鍵が開かない。室内には見知らぬ死体が……密室殺人? そこに登場するは、チョーモンインこと超能力者問題秘密対策委員会出張相談員・(見習)神麻嗣子(かんおみ・つぎこ)。色無地の着物に袴という大正ロマネスクな中学生ぐらいの可愛い子なのですが、この子がまた礼儀正しいけど時々勘違いに走るドジッ娘という。狙ってますなあ。もう一人、現場に登場する女性警部・能解匡緒(のけ・まさお)は、プレイメイトも真青なダイナマイトボディという。趣味ですなあ。
この3人がタッグを組んで、地区内の超能力密室の事件を紐解いていきます。どうやって密室を構成したか(ハウダニット)から、なぜそんな密室をつくる必要があったか、もしくはどうしてそんな密室ができてしまったか(ホワイダニット)へと事件の焦点を移し変え、論理を解きほぐしていく保科の手際は小気味よいですね。超能力を使うに至った経緯、その犯人の心情が、現場の些細な手がかりや違和感から、鮮やかに再構成されていきます。こういう方法もアリだなあ、と思いましたよ。『念力密室!』は短編連作集ですが、これはシリーズ物であり、他の長編も楽しみです。