ハイペリオン

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

長門様推薦のSF。……もっと早く読んでおくべきだったなあ。

ハイペリオンはヒュペリオーンともいい「高みを行く者」の意で、ギリシア神話の神で太陽神・光明神。この名を冠する惑星ハイペリオンが物語の焦点となります。
人類の聖遷(地球脱出)より800年、連邦はテクノコアと呼ばれるAI群と独立しながら共存し、宇宙に散らばる惑星を転移システムで連結し、ワールド・ウェブを形成しています。ハイペリオンには「時間の墓標」と呼ばれる未解明の遺跡があり、抗エントロピー場という時間が逆転する場が存在します。つまり、ここでは時間が未来から過去へ流れているのです。シュライクと呼ばれる正体不明の殺戮魔獣が跋扈し、それを崇拝するシュライク教団の聖地でもあるハイペリオンは、いまや連邦と宇宙蛮族アウスターの戦場になろうとしていました。そんな中で、シュライク教団の巡礼に選ばれた七名が、各々の理由を抱えてハイペリオンを訪れるのでした。
カンタベリー物語にならい、巡礼の一人一人が順番に己の人生を物語として語り聞かせていくのですが、どの話もそれだけで小説になるほど〈ユニーク〉です。そう、長門大明神は正しかった。秘境探検あり、宇宙戦闘あり、詩人遍歴あり、哲学的な闘病あり、ハードボイルドあり、時狭間の逢瀬あり。いずれも、想像力の限界を軽々と超えて、なおも光り輝く珠玉の逸品。しかも、「続く」で終わってしまうのだから。
これは、『ハイペリオンの没落』や『エンディミオン』等も読んでみないとねえ。