Aブロック作品の推理

さっそく、各作家さんのサイト巡りをしてみましょうかね。


―Aブロック―

□『Father time』(有栖川さん)
http://fathertime.my-sv.net/


情景を場面ごとに紡いでいく印象が強い作家さんです。物語は漂うようで、その実は幻燈器が映し出す切り絵さながら。
文体としては、「ときうさぎ」の散文形式から、最初はA-04かとも思いましたが、段落ごとの場面転換と文章のまとまり方から、A-12がより有栖川さんらしいと感じました。題材も、『Father time』の幻想的な風景によくあっていると思います。


□『姫様御殿』(わたなべ りえさん)
http://eieio.jp/~loyrie/index.htm


ファンタジーからSFまで、しんみりからコミカルまで、多彩な作品を書いておられます。すいすい読めて後味は爽やか。
文体としては、勢いのある会話文が主で、説明部は分離する傾向あり。台詞末尾に幼母音や「!/?」などの多用があるので、A-08が合っていそうですね。前向きな文章も、わたなべ りえさんらしいです。
修正)と思いましたが、A-03のほうが実はぴったりかも。わたなべ りえさんの癖としてカタカナ語多用があるので。A-03とA-08では、A-03の方がより前向きですね。変更しておきます。


□『水溜まりの雲』(葵霧音さん)
http://cluod-wave.hp.infoseek.co.jp/


ふしぎ遊戯関連とオリジナルの創作を載せておられる作家さんです。事物の後底に沈む美しさを表す詩文は、余韻を心に響かせます。
二通りの行間を持ち、頻回に改行される散文詩の形式は、A-04が最も合いそうですね。

修正)と思ったのですが、A-04は紗代さんの方がより合致率が高そうです。よく読むと、葵霧音さんは「・・・」より「…」「……」等を使用されてますし。
すると第二候補として、A-09が挙げられます。題材としても「異能を得て異界へ」というのは葵霧音さんの好みに合いそうです。

再修正)こ、これも違いましたか……。文体を変えておられると考えるのが妥当でしょうね。すると、A-10が最もあてはまります。「喪われた過去への追想」というテーマを踏まえた、葵霧音さんの好みを考えれば、中華風世界で漢字密度の高い描写は頷けます。「〜。」という括弧内読点も特徴的。一方で、沙倉藍さんの作品読み込みは甘かったようです。葵霧音さんの作品をA-10でFAとしましょう。


□『CRESCENT』(沙倉藍さん)
http://ayles.fc2web.com/


喪われた想いに儚さを噛みしめて綴るような、哀切溢れる文章を数多く物されています。重ねる描写は重厚にして繊細な油彩画のよう。
難しい漢字も色々と使われ、凝った表現を好まれるようです。そして「〜。」と括弧内読点を使っておられる。沙倉藍さんは、A-10の作者さんではないかと考えました。

修正)しかし、A-10は葵霧音さんの作品のようです。そこで沙倉藍さんの「Puella Aeterna」を数章読み進め、連載中の「Fallen Crown」にも眼を通すと……。確かに「〜。」を用いられるのですが、数詞がアラビア数字ですね。これはA-07の特徴に合致します。おそらく意図的に括弧内読点は省略したのでしょう。夢の記述から受ける印象も、各作品に合致します。沙倉藍さんの作品は、A-07だと考え直しました。


□『The song of...』(紗代さん)
http://arvillion.web.fc2.com/


歴史物あり、現代物あり。登場人物の感情が移り行く臨場感を、密に捉えて書き留めて。頻繁に改行し、行間を空ける文章が特徴的ですね。
っとと。これは……。「星落つる刻」「雨の名を知っている」に代表的ですが、行間の複数の空け方に加えて「・・・」を使用、「?」「!」の後の一字空けがありません。「〜。」の括弧内読点は少数認めるのみ。紗代さんこそ、A-04で間違いないでしょうね。
(すると、葵霧音さんの予想の方が間違ってましたか……修正しないと)


□『青空荘』(青澄さん)
http://aozora.pepper.jp/index.html


短文を積み重ねて組みあがる絵柄は、感情を筆に乗せた水彩画の趣きがあります。軽快な文体で、時に笑みも交えて、人々の思いをさらさらと描く手練の方。
長編「delicate feelings」と短編集を読ませて頂き、発散しそうでふわりまとまるイメージがA-02に近いと思いました。おそらく青澄さんの作品でしょう。

修正)しかし、どうやらA-02は担倉 刻さんの作品のようです。もう一度再検討しますと……A-03でしょうか。「逃がし屋フェステ」には「""」の表記もありますし。

再修正)いやいや、A-08の方がより感触が近いかな、と思い直しました。


□『Bitter Glace』(千草ゆぅ来さん)
http://bitterglace.moonstone.rm.st/


愛が、あふれています。人々への優しい眼差しが感じ取れます。丁寧に拾われ、磨き上げられた物語の数々が輝いています。
ゆるやかなテンポ、抑制された台詞、緩急のついた文体密度もそうですが、何より優しい文章に魅惑されました。「宛てのない奇蹟」に良く似ています。千草ゆぅ来さんの作品は、A-01ではないでしょうか?


□『環として満ちる瞬間』(担倉 刻さん)
http://annulus.cute.cx/


軽快な文章で、淡白ながらスピーディーな展開で、読者を先へ誘います。やや強引なとこもありますが、それも含めて持ち味かと。
二種類の行間を用いるアップテンポ。すらすらと流れていく文。「カモメ塩サバ六番地」には「【】」の記述もあります。担倉 刻さんが、いちばんA-02の雰囲気に合っていますね。もし違っていれば、題材込みでA-06を第二候補として挙げておきます。
(すると、青澄さんの方が間違い……修正しておきます)


□『Never-never Land』(彪峰さん)
http://ayamine.sakura.ne.jp/


硬質な文体に、登場人物の想いを巧みに織り込めておられますね。無駄なく配された舞台で喜怒哀楽は余さず語られ、最後には愛しさに収束していきます。「妖―あやかし―」「SIXTH」の二大長編をメインとして書かれ、二者は平安絵巻と近未来SFという枠こそ違え、演出の手際良さが心地好いです。
文頭・文末に「――」を配する癖や、「SIXTH」に著しいカタカナ語などから、彪峰さんの作品は、A-05だと考えました。


□『白夢砂漠』(望月あさらさん)
http://asara.velvet.jp/


大勢の人々が言葉を交わして物語が進み、ときに皮肉を加えつつ感情の変遷を辿り、やがて愛憎の落ち着く場所へ。テンポの良い文章を書かれる作家さんです。
『虹色の月』『異世界の司』の各作品群から受ける、皮肉交じりの元気良さはA-09によく合います。連載中の「Pepper*Mint*Honey」には(意図的でしょうけれど)「」内「」も見受けられましたし。望月あさらさんの作品は、A-09ではないかと感じました。
(すると、葵霧音さんの予想を変更しなければ……)

修正)むむむ、こちらも難しい。数詞にアラビア数字を使われる事からは、A-07かとも考えましたが、やはり沙倉藍さんの方が近いような気が……。望月あさらさんは、末尾に「fin」を使われますね。A-11でしょうか? 「ヤスハル―泰治―」では漢数字も使われてますので、絶対アラビア数字というわけでもないようです。「十六夜月の花」の耽美さも含めて考えると、望月あさらさんには、A-11が合いそうですね。


□『七つのこ虹のこ』(流雲もこ雪さん)
http://nanantunokonizinoko.web.fc2.com/


短文を重ね連ねるアップテンポの文体。SFもファンタジーも何でもアリ。楽しみながらすらすら書いておられる様が目に浮かびそう。
こ、この方も「」内「」を使用されてますね……。しかも長編「逃亡」では場面転換に「***」を使用。地の文では、「」を用いた単語や、感情を叩きつけるような直接一人称の短い台詞。どうやら流雲もこ雪さんの作品が、A-09に合致する確率が高そうです。
(今度は、望月あさらさんの予想を修正しないと)


□『Three-master』(RAYさん)
http://3master.fc2web.com/


主に鬼や吸血鬼、妖魔がらみのお話。異界の男性を現界の女性が訪ねて交流する構成が多いようです。短文を連ね、密に纏まった深味ある作品に仕上がっています。
説明部では台詞が排され、逆に会話部では短い台詞と掛け合いがぐいと流れを引っ張ります。おそらく残されたA-06がRAYさんの作品で間違いないかと。「不思議にみどりがかった瞳」「腹の底から笑う声」がこっそり記された署名に見えてしまいました。

―Aブロック 推理結果―

  • A-01  星降る夜に  =  『Bitter Glace』(千草ゆぅ来さん)
  • A-02  星々の中夜  =  『環として満ちる瞬間』(担倉 刻さん)
  • A-03  ここで私は生きていく  =  『姫様御殿』(わたなべ りえさん)
  • A-04  逆さまの星たちとお母様の夢  =  『The song of...』(紗代さん)
  • A-05  SPEED STAR  =  『Never-never Land』(彪峰さん)
  • A-06  涼野伊織那(すずしのいおな)と障子の穴  =  『Three-master』(RAYさん)
  • A-07  『ゆめいろこんぺいとう』  =  『CRESCENT』(沙倉藍さん)
  • A-08  孤島のI and(アイアンド)  =  『青空荘』(青澄さん)
  • A-09  流星と勇者  =  『七つのこ虹のこ』(流雲もこ雪さん)
  • A-10  三つ星  =  『水溜まりの雲』(葵霧音さん)
  • A-11  エトワール  =  『白夢砂漠』(望月あさらさん)
  • A-12  ミルフィオリの夜に  =  『Father time』(有栖川さん)


どれくらい当たっているやら……半分程と思いますが。
発表が楽しみです。
疲れるけど楽しいですね。次はどのブロックへ行こうかな?


変更)A-03,A-08の予想を入れ替えました。