フレームシフト

フレームシフト (ハヤカワ文庫SF)

フレームシフト (ハヤカワ文庫SF)

ヒトゲノムセンターに勤務する遺伝子学者ピエールは、帰宅途中ネオナチの暴漢に殺されかける。ネオナチに狙われる原因は何も思い至らない。難病に苦しみつつ、ヒトゲノムに隠された秘密に命がけで挑む傍ら、連続殺人事件に巻き込まれたことに気づいたピエールは妻である心理学者モリーの手助けを得て事件の謎に迫っていく……。


良作だが、アクションの無いハリウッド映画ぽい印象。
うーん、『ハイペリオン』読了直後なので辛い評価になってるなあ。基本遺伝学がメインガジェットなのも、厳しい目線になる原因。普通の水準は楽々クリアしてるんですけどね。
ハンチントン舞踏病ホロコーストナチス優生学テレパスネアンデルタール人、そしてメインのフレームシフト……美味しいネタは幾つも放り込んでるんだけど、幾つものプロットが部分部分で重なりつつ並行処理され、各々の流れを追いにくい。ちょっと消化不良かも。後半はまとめに入っている感あり。主人公ピエールが難病なので仕方ないにしても、もう少し賢く動けなかったか。ラスボスを追い詰めた後も、きちんと裁いてほしかった。ソウヤーならもっと巧く仕上げられたはずなのに……期待感が上回りすぎたか。まあ、地味なネタなのでしょうがない。個人的には『スタープレックス』や『ターミナル・エクスペリメント』の方が好み。
でも愛娘アマンダに愛情を注ぐピエールとモリー夫妻には、見守りながらほっこり温かい気分になりましたよ。