Aブロック作品の感想・解析

ん。シェイクスピアも良い事を言っていますね。
なかなか先の見えない推理に明け暮れていたら、ろくな感想が出てこないことに気付いて愕然。これでは参加して頂いた作家さん方に申し訳が立たないじゃないですか。そこで、先に一通り感想を書いた後に、各作家さんのサイト巡り、然る後に推理、という段取りを踏もうと思います。最初の投稿ですか? ……フライングということで一つご勘弁を。


ブロックと話の順に、最初に話の感想を、ついで文体の特徴などの解析を書くことにします。


―Aブロック―

  • A-01  星降る夜に

感想:
積もる雪も解けていきそうな、熾火の暖かさが伝わってきます。クリスマスの奇跡物にありがちな題材ですが、シンプルで平明な語り口と、何より差し出された手の温もりがそんな事を考えさせません。嫌いじゃないです、こういうの。いえ、大好きです。

解析:
短文を細かくつなぐ、ゆるやかな文章。そのためか、句点控えめ、台詞短めで濫用はされず。括弧での内心表現や、「……」「――」の両方あり。

  • A-02  星々の中夜

感想:
夜歩くと、立ち現れることのある不思議な思考を掴まえて、少し神秘の香を施すとこんな文章になるのかも。星座ネタですね。占いは詳しくないので……象徴の意図は分かりませんでした。余韻の残し方が巧いです。

解析:
二種類の行間あり。散文的。「【】」を使用。「……」「――」両方あり。文体だけでなく、文章の流れでも散逸するイメージを好むかも?

  • A-03  ここで私は生きていく

感想:
何かが見つからずに途惑う気持ちが、自然に流れてきました。ノスタルジーではなく、現実を足場としたい。時々は振り返って、置き残した忘れ物がないか探してみたくなりました。

解析:
私の一人称語り。短文から中程度の長さまで。言い換え文を重ねる。台詞密度はバランス型。「――」多く「……」は意図的に使用。「""」を使用。

  • A-04  逆さまの星たちとお母様の夢

感想:
失われた記憶の欠片ほど哀切なものはありません。亡き故郷への慕情ならなおさらです。逆さまの星が輝いて回り、心の底に沈んでいきます。

解析:
散文。広い改行。冒頭一字空けなし。「?」後の一字空けなし。「可笑しそう」の表記あり。「・・・」あり。「――」を使用。

感想:
レーサーの魂がサーキットを駆け抜けていくのが見えそうです。欠け落ちた物語が補われ、エンジンを噴かす一瞬。作者の鮮やかなステアリングを堪能しました。爽やかな一幕ですね。

解析:
短文を改行して重ねる形式。カタカナ語多用:「チャンピョン」など独特なものあり(森流?)。前半「……」、後半「――」の意図的使い分け。「瞠目」「淡〈泊〉」を使用。

  • A-06  涼野伊織那(すずしのいおな)と障子の穴

感想:
思わぬ来訪者に呼応して、引き出される伊織那の語り。「魔法は世界の片隅で起こっている」好例だと思います。こういう主人公だから、伊織那も居候を決め込んでるんでしょうねえ。善哉。

解析:
わたし一人称。短文が主、中等度の長さの文も多少。「……」「――」両方あり。説明部以外は台詞が主となって引っ張っている。

  • A-07  『ゆめいろこんぺいとう』

感想:
澄みきった情景。夢の残滓が眠る瓶が、手に取るように見えてきました。描写が美しい。最後に行き着くまでの、行間まで想起させる力がありますね。主人公に、頑張ったねと言ってあげたくなる文章でした。

解析:
短文から中程度以上の文までバランス型。句点はやや多目か。数詞ではアラビア数字が頻用される。「……」「――」両方あり。同音を重ねる形容が多い?

  • A-08  孤島のI and(アイアンド)

感想:
英語の歌がいいですねえ。ずいぶんかっきりした文章ながら、茫洋と浮かぶ情景は、夜の海辺で焚火に集まる人々さながらです。贅沢や夢ってのは、皆でつくるもの。前に歩こうとする心が、琴線に響きました。

解析:
最初の説明部分が分離。会話パートでは短文が主。「《》」使用。「……」は人物の戸惑い、「――」は間を持たせる表現として使用。台詞末尾に拗母音使用あり。「!?」あり。「詠み上げ」の表記あり。

  • A-09  流星と勇者

感想:
わずかな場面で、鮮やかに世界を構築してのける早業。必要最低限に綴られたダイアローグが、想像の余地を残しています。謎めいた「流星」は謎のままで、それもまた一興。見習いたい簡潔さです。

解析:
短文の連鎖。台詞多し。場面転換:「***」。「」内で「」使用。「……」「――」使用。「嘲笑った」の表記を使用。言い切りの体言止めのフィニッシュ。

  • A-10  三つ星

感想:
とある二人の再会話、と思いきや。悲惨な世界で、二人とも己の信念を貫く様に感銘を受けました。最後の締め方がなんとも絶妙。深い必然。作者さんというより、語り部さんとお呼びしたい。物語りも「三つ星」ですね。

解析:
短文は少なめ。中等度〜長文での描写が重厚。「〜。」と括弧内読点あり。漢字の含有量、特に凝った記述多し。「大業」「此処」「小袖」「畢竟」「流離う」等の記述あり。

  • A-11  エトワール

感想:
歴史の裏、英雄の真実。時の襞に埋もれた話の体裁で描かれた、中世物語を垣間見ました。この作者さんも、言葉の使い手でいらっしゃる。そは波間に眠る古の石像のごとく……触れし者のみ憶ゆる話。

解析:
短文〜中等度のバランス型。抑制された印象は、意図的な文末の過去形による。「……」「――」両方あり。「ヴァン」の表記あり。平易な表現を主とする印象あり。最後に「=fin=」表記あり。

感想:
似たもの同士、少年二人の交流。星が降るだけではダメで、己の心裡に潜む錠をうち明けてこそ――。主人公が最後に開いた答は、まさに流れ星の贈物でしょう。清々しい読後感。

解析:
短文〜長文のバランス型。行間に「********」使用。文内に「」での台詞埋め込みを多用。「……」少数、「――」多し。句点は控えめながら、ゆとりを持たせる際には短めの文節で使用。


さて、次はサイト巡り。推理が出来たら、また更新します。